5.26- メモリアルデーの感想

※このNY日記はもともと田中ゼミの学部ゼミ生のために書かれたものです。

今日5月26日月曜日はメモリアルデーで休日です。メモリアルデーは戦没将兵慰霊の日というのが趣旨なので、日本で言えば終戦記念日とお盆みたいなものかもしれません。アーリントン国立墓地からブッシュ大統領がメモリアルデーのイベントで演説している様子を中継しています。今日は休みなので、自宅で仕事です。5月にしては肌寒い日が続いており、華氏で70度つまり摂氏21度を切る日がつづいています。昨晩から雨で日本で言えば、梅雨寒といったところかもしれません。こちらの人に聞くと異常気候だということですが。

出版の約束をいくつかしているので、その約束を果たすべくパソコンに向かって仕事をこの数日間しているのですが、なかなか進みません。先日、コロンビア大学新聞でprocrastinationという言葉を見つけました。皆さんの何人かにも経験があるかもしれませんが、試験前や提出しなくてはいけない仕事があるとき、テレビを見たり関係ない本を読みたくなったりうだうだして先延ばしにする。そういう状態です。どこにもそういうことがあるんだなと思いました。

先ほどヤンキースとボストンソックスの試合で松井がチャンスでゴロに終わったところを中継していました。松井が出る前にはテレビで前にサヨナラホームランを打ったシーンや外野で好手をしたときのシーンを放映して期待していたのですが、残念・・・。テレビでは先ほど東北地方の地震を報道していました。今のところ亡くなった方がいないのが幸いですが。

NYで暮らすということについて今日は書いてみます。9.11のあと、外国人に対する締め付けはますます厳しくなっているようです。先日運転免許の筆記試験を受けにダウンタウンに行ったのですが、そのときに若い日本人の男の子で、PA(コンサートのときの音のコントロール)を商売にしている人に出会いました。彼はニュージャージーのコンピュータ学校に登録して、実はイリーガルに働いているのだそうです。

このような形で例えば語学学校に登録して不法に働くという例はかなりあるようです。当然当局も摘発を進めて、そのようなことを許す学校(つまり学校に来ていない学生も授業に出席しているかのように装って不法入国者に協力する学校)はだんだん少なくなってきたのだそうです。このため不法に滞在したり働いている人は減少しています。
こちらでは、運転免許を持っていることは非常に重要です。NYのマンハッタンは全米でも珍しい車が無くても生活できる町なのですが、それでも自分のID=自分が何者か証明するために運転免許が欠かせません。アメリカには住民登録というような制度がないので、免許がそのかわりをしているわけです。

しかしこれを取るためにはNYでは、「点数」が必要になります。点数とは自分の住所を証明する手段のことです。具体的には、パスポートが3点・ソーシャルセキュリティナンバー(SSN)が2点・電気ガスなどの自宅宛の請求書が一点・クレジットカードが一点・・・という具合です。免許を取得するためには6点が求められます。

つまり、パスポートだけでは免許を取得するために十分ではないのです。そこに住んでいることを証明するために、自宅あてにきた電気などの請求書もひとつの証明になります。また自分の取引先の銀行以外のアメリカで発行されたクレジットカードも証明になります。

しかしこれらを取るために先に書いたSSNが求められることが多いのですが、現在このSSNを取得することが米国で働いている以外の人には困難になっています。NYでは原則的にSSNを働いていない人(つまり税金を納めていない人)には出しません。それで困っているのは学生や駐在員の奥さんなどです。

私の場合も普通に申請しても出ないはずなのですが、幸い20年前の留学時代にとっていたSSNを大事に保存しておいたので、それが今回幸いしました。いずれにしても、NYで生活するためにはいろんなIDが必要になってきて面倒なことは確かです。クレジットカードも日本で発行されたものは例えば、インターネットで使えないことがあります。アメリカで発行されたカードをもっていて、それを使ってクレジットヒストリーを積み重ねることもこちらで社会的信用を作るうえで必要なことです。短期の旅行者にはあまり関係ないことですが。

アメリカのサービスということについて少し書きます。日本ではアメリカのサービス業は進んでいるとか、日本のサービス業は生産性が低い、という話はよく耳にします。数字の上ではそのとおりなのでしょうが、実際こちらのサービスというのは日本に比べればサービスなど無いに等しい。

例えば、銀行のATMは日本のと相当違います。お金を引き出すことは何とかできますが、通帳などはないので、自分の口座にいくら入っているかは現金を引き出したときにチェックしておかないといけません。またお金を預けるときも、すぐに自分のお金にならないのです。チェック(小切手)を書いて銀行に預けるとそれが自分で使えるようになるためには一週間以上かかります。また現金をATMで預けるときは、封筒に現金を入れて機械のなかに投げ込む。それを処理するのは機械でなくて人間なのです。ですから銀行も間違いが多いといわれています。

銀行カードを受け取ったらまずそれが本当に使えるかどうかチェックしなさい、といわれています。先に日本でATMが止まったり、数字が間違ったというので大騒ぎになったりしますが、こちらではそのようなことはよくあるらしいので、大騒ぎになったりしないようです。

大体、あの小切手という制度が日本人にはなじみにくいものです。小切手(チェック)とは銀行の当座預金から自分のお金を支払う仕組みです。銀行から送ってきた小切手帳をもち、支払うときに金額をあて先を書いてサインする。友人への支払いも小切手を使うこともあります。気分的にはなんだかニセ札を書いているような気分になります。
まあ銀行だけではなく、こちらのサービス業というのは、その企業自体は身軽で、お客に負担をかける仕組みになっているように思えます。日本のサービス業の生産性があがらないのはもっともで、何から何までお客のためにやってくれるのが日本のサービスですから。(日本で営業などやっている人はこのことを痛切に感じているでしょう)

よく言えば、こちらでは売る側と買う側とが対等か、売る側が強いということになります。日本では買う側が強い・・・ということなんでしょうか。ですから日本でアメリカ流の「顧客満足」概念を振り回す輩を見るとちょっと軽蔑したくなりますが。もっともこちらに長くいるとこんなものと思ってそれが気にもならなくなるようです。
ゼミ生のような若い人にしてみれば、なんでも手に入るコンビニがこちらには無いというのは耐え難いと思いますよ。セブンイレブンは郊外にはありますが、マンハッタンには無いですし、あったとしても日本のようなきめ細かい品揃えなど期待しても無駄ですから。

コロンビア大学は今夏学期なので、それほど学生もおらずひっそりとしています。先週は雨の中、卒業式がありました。
ビジネススクールのMBAの授業では新製品開発のコウリ先生(インド人)の授業を聴講しているのですが、エキサイティングな授業です。電話帳のようなリーディングマテリアルを渡され、そこにはさまざまな企業の新製品開発のケースやあるいは理論が並べられていて興味尽きないものがあります。
そのリーディングを事前に学生が読んできて、授業ではそれを元に討論が行われます。先生が発言しているときにも、学生はどしどし疑問を発言したり発言します。また先生が疑問を発するとどしどし手が上がって発言が続きます。

これとは別に博士課程の学生と教員とが行う、マーケティングのセミナーが毎週開かれており、教員が交代で最近の研究を発表します。先週はまだ若いAndyという教員が消費者行動における「エージェント」について発表していました。われわれは自分が知らないことを自分のことをよく知る友人にアドバイスを求めます。例えば、パソコンは何を買ったらいいか、というようなことです。問題はこのようなエージェントは本当に私のことをどのくらいわかっているか、ということにあります。結果を単純に言えば、私がその友人と関係が深い(関与が高い)ほど自分の好みを正しく予想するだろう、と自分が考える傾向があることが示されます。しかし実際にはその友人は自分のことを正確には把握していないことも実証的に示されます。つまり人間は自分が深く関与している人間にはover-confidenceを抱くというのがひとつの結論です。
こうしたセミナーでも教員から発表中にどんどん疑問点が出されます。発表者の先生も負けずにすぐに答えやコメントを出します。このあたりのやり取りはまったく機関銃のようです。日本ならば発表が終わるまでじっと待っているところですが、こちらでは遠慮はありません。おかしいところがあればその場で指摘されてしまいます。雰囲気はカジュアルですが、そこには緊張感もあります。これがアメリカのアカデミアなんだなといまさらながら実感させられます。

渡米して一ヶ月経ちました。だんだん生活が軌道に乗ってきているのですが、本当にアメリカの生活になじむのにはいつまでかかるかわかりません。郊外のハリソンに住んでいるのですが、NYでは日本語だけで済ませようとすれば不動産屋から中古車屋、日本食品屋、日本のビデオ屋さん、なんでもあって英語を使わなくても生活ができてしまいます。6月にはマクドナルドに勤めるマネージャーと法政から行かれている福田先生に会うため、シカゴを訪問する予定を立てています。

5.27 カジュアル情報篇

田中洋 中央大学ビジネススクール教授のオフィシャルサイト Marketing, Brand, Advertising